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こころのメッセージ


大切なご家族を自死(自殺)で亡くされた方へ

福岡大学医学部精神医学教室 原田 康平

H26年8月掲載

(1)はじめに

偏見や誤解を心配して孤立しやすい

大切な人が亡くなるという体験は遺された人々にさまざまなこころの問題を引き起こすことがあり、「死別反応」と呼ばれます。とくに自死の場合は病死や事故死よりもさらに深刻な影響があると言われています。
自死に関する偏見や誤解を心配して「言えない」「知られたくない」と思うことが多いので、一人で抱え込んでしまって孤立した状況になりやすいのです。

さまざまな問題を同時に抱えてしまう

自死による影響に加えて、「自分の健康の不安」「借金」「裁判など法律上の問題」「子どもの養育」「親族間の問題」などさまざまな問題を同時に抱える方もおられます。

(2)直後のさまざまなこころとからだの変化

誰にでも起こる自然な反応

こころの反応
  • 「何で自殺したの?」などのさまざまな形の「なぜ?」という疑問が何度も浮かびます。
  • あまりに衝撃的なことなので、「自殺したなんて信じられない」という気持ち(否認)や、「現実じゃないみたい」と自分に起こったことと思えなかったり(離人感)、 「悲しい気持ちさえおきない」と感覚が麻痺する(感情の麻痺)こともあります。
  • 「あの時こうしていれば」「私のせいだ」「私だけ生きて楽しい思いをして申し訳ない」と 自分を責めてしまうこと(自責の念・罪悪感)が続いたりします。
  • また、「勝手に死ぬなんて卑怯だ」と亡くなった本人を責めたくなる気持ち(怒り)や、 「〇〇のせいで自殺したのだ」と他の人を責めたくなったり(他罰感)、 「なぜこんな目に合わなくてはならないのか」と人生そのものを責めたくなる気持ちになります。
  • 憂うつで落ち込んだ気持ち(抑うつ)や、 「悲観的に考えてしまう」など将来に希望が持てない感覚(幸福感の喪失)を感じます。
  • 「不安でたまらない」と神経が過敏になったような感じ(不安・過覚醒)になることもあります。
  • 「〇〇が自殺したなんて知られたくない・言えない」という気持ちから、周りの人から孤立しがちになることがあります。
からだの変化・反応

こころだけでなく、以下のようなからだの変化が起こりえます。

  • 食欲がなくなる・食べ過ぎる
  • 疲れやすい
  • 寝付きが悪くなる・途中で目が覚める・早朝に目が覚める・恐ろしい夢を見る
  • 集中力が落ちる・仕事や家事、外出、その他の日々の活動における能力が低下する
  • 胃の痛み・下痢・便秘など

こういったからだやこころの変化は誰にでも起こりうることであり、時間が経つと自然によくなることもあります。

命日反応

亡くなった人の命日や誕生日、結婚記念日など思い出が深い特別な日が近づくと、気持ちの落ち込みや体調が崩れるなど、亡くなった直後のような反応や変化が出ることがあります。このような反応は大切な人を亡くした方にはよく起こりうる自然な反応であるので、自分を責めたり不安に思ったり、これらの気持ちを無理に抑えたりしなくていいです。

専門家によるケアが必要な体調の変化

ただ、程度によっては、うつ病、不安障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、アルコール依存症などを発病して専門家によるケアが必要になることがあるので、

① これらの変化が10日以上長引いたり
② 日常生活に支障をきたしたり
③ 死にたい気持ちや自分を傷つけたくなる気持ちで苦しくなる

などの場合には、ひとりで抱え込まずに専門の機関にご相談ください。

(3)喪の作業という回復過程

こころとからだの変化の後、年月をかけながら大切な人の死を受け入れる過程があります。これを「悲哀の営み」または「喪の作業」といい、4つの段階に分かれます。

第1段階:情緒危機の段階

大切な人の死は激しい衝撃となるため、直後数週間は、興奮したり、パニックになったり、無力感でいっぱいになったりします。「何かの間違いでは」「死んだことが信じられない」「今にも会えるのではないかと思う」など、大切な人の死を受け入れることをこころが拒否した状態や、「涙も出なかった」など感情が麻痺したような状態になることもあります。

第2段階:抗議・保持の段階

数ヶ月から数年の時をかけて、失った大切な人をこころのなかでなんとか取り戻そうとしたり、ずっと持ち続けようとしたりします。「まだどこかで生きているのでは」など、現実にはあり得ないと知りながら、さまざまな空想をします。また、この時期に怒りや不当感を感じることが多いです。「なぜこんな目にあわなければならないのか」といった不当感に加えて、「〇〇のせいで自殺したのだ」など怒りが他の人に向いて責めたくなったり、「私のせいだ」と自責感・後悔の念にさいなまれたりします。

第3段階:断念・絶望の時期

もはや失った大切な人が永久に戻ってこないという現実を認める段階です。絶望と失意に向き合うため、ひきこもるような気持ちやゆううつで無気力の状態となりやすいです。

第4段階:離脱・再建の段階

苦しい喪の作業を経て、大切な人の死を受け入れあきらめる段階です。失った大切な人からこころが離れ、自由になります。悲しみは残っているけれど、なんとか持ちこたえられるようになります。以前と同じという意味ではなく、苦しい体験を踏まえた上での新しい生き方や人とのつながりにもとづくこころのあり方を見出そうとします。以前よりも自分自身の人生を大切にしたり、他の人への思いやりが深くなります。

この4つの段階を少しずつ進みながら、時には行ったり来たりしながら、それぞれのペースで大切な人の死から回復していきます。同じ家族であっても、回復のペースは異なるため、無理はせず自分のペースを大切にしてください。

(4)一人で抱え込まずに相談しましょう

上記のようなさまざまなご負担を一人で抱えてしまわずに、下記のリンクのような支援機関に相談しましょう。