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こころのメッセージ


うつ病当事者インタビュー ~うつ病と共に生きること~

保健福祉局総合保健福祉センター精神保健福祉センター

H17年3月掲載

 うつ病を治療されている方、うつ病じゃないかと感じているけどまだ誰にも相談できていない方、身近な人が落ち込んでいる方、たまたまこのページを開いたけどうつ病や精神病のことは何も知らない方・・・そんなみなさんに、うつ病を経験された方の声をお届けします。うつ病とはどんな病気か、インタビューを通して少しでも理解していただければと思います。

精神保健福祉センター(以下「センター」):いつ、うつ病を患われましたか?

Aさん:初診は2001年の3月、丸4年になりますね。

センター:最近の病状はいかがですか?だいぶ回復されてるようですが。

Aさん:良かったり、悪かったり・・・。まだまだ完治したって感じではないですね。去年の12月には入院していましたし。まあ、波はありますが薬も調整できてるし、昨日主治医の先生からも「今までで一番いい顔してる。そろそろ薬止めようか」って言われてますから今は調子いいですよ。でも今日はそういう状態だけど、明日はどうなってるかっていう不安はありますけどね。

センター:まだ波があるんですね。

Aさん:私、元々声が高い方なんですけど、うつの状態(低い声)から薬を飲んで、声が高くなっても「まだまだ元気な時の声じゃない」って思って、いつの間にか普通の高さ通り過ぎてすごく高い声で話ししてたり(笑)。自分では前に比べたら元気じゃないって思っても、周りの人に「元気になったねー」なんて言われて・・・。

センター:うつ病になる前は元気な人だった?

Aさん:すごく元気。元気な人って言えば私、みたいな(笑)。明るくて、おしゃべりっていうイメージでやってきてて、病気になって動けなくなってる私とは、天と地くらいの差がありますね。仕事で男の人には負けたくない!みたいな。だから発症前は、元々他人から見ても元気な人だなって思われるくらいだから、ちょっとくらい元気がなくなっても薬を必要とするまではいかなかった。
でも、一旦発症した後は、薬飲んでちょっと調子が良くなると、体裁を気にしたり、人に気を使ったりするほうだったから、人前では普通に振舞ってしまって段々とエネルギーを使っていって、最後には症状が出て人前にも出れなくなる。頑張ってしまうんですよね、最後まで。

センター:うつ病になった原因というか、やはり強いストレスを受けたんだと思いますが、何か思い当たることはありますか?

Aさん:とにかくすごく忙しくて・・・。発病前に離婚して、子供2人を抱える形になってましたけど、看護師をしながら、なんとか子供達は大学まで行かせられるかなって思ってました。ちょうど離婚してすぐ位から、勤め先の病院で急に昇進し始めて、とんとん拍子で管理職まで上っていってしまって・・・。当然仕事内容も変わりますよね。それに加えて、当時は景気も下り坂の時期で、病院も生き残りに必死だから、ギリギリの人員の中で何とか黒字にしないといけないし。
朝、子供達を保育園に預けて、迎えは友人に頼んで、毎日夜中まで働くっていう生活でしたね。夕方に「夜勤が一人足りない!」なんてことがあって、でも他に誰もいなければ私がそのまま夜勤に入ったり。管理職だし若いから周りも私に頼んでくるんですよね。で、あれもこれも私がやらないといけなくなって・・・。

センター:全部抱え込んじゃって・・・。

Aさん:そう。全部抱えこんでしまって。でも若いし元気だから、こなせちゃうんですよね(笑)。そうしたらまた仕事が回ってきて。うまく仕事を他の人に回せればいいんですけど、「人に頼むくらいだったら自分でやった方が早い」なんて思って、結局頑張って一人で片付けちゃう・・・。
そうこうしているうちに頭も回らなくなって、「もう限界!子供2人くらいならパートでもして食べさせることはできる」って、その時はそんな軽い感じで、仕事を辞めることにしたんですね。
相談すると上司はびっくりして、「頭が回ってないのなら今は何も考えないで、最近休暇も取ってないから、ゆっくり休みなさい」って慰留されて、とりあえず休むことにしたわけです。

センター:その時はうつ病だと?

Aさん:全く思いませんでした。看護師ですから、心の中では何か変だなって感じはありましたし、内科的な病気ではないとは思ってました。
で、休み始めてから3日くらいかかりましたけど、電話帳で近くの精神科クリニックを探して受診しました。精神科にかかったのは、仕事柄、そこそこにはこころの病気について理解があったからとは思いますけど。その時まで自分がうつ病だなんて思いもしませんでした。

センター:だけど具合が悪くて、精神科に行かないといけないって感じていたわけですよね。

Aさん:そうですね。大好きだった仕事ができなくなったことが大きかったですね。家事や育児は嫌いでしたけど(笑)。とにかく頭が回らない。家事も育児もそこそこやれていたけど、大好きでしっかりやれていた仕事ができない・・・。
で、初診時に問診票書きますよね。その内容を見て先生がすぐに「うつ病ですね」と。私が驚いていると、先生に「もし、この問診票の内容をあなたの部下が相談してきたらどう思います?」って言われて・・・。私は「病院に行けって言いますよね」って言うしかない(笑)。その時やっと自分はうつ病なんだって思いました。

センター:典型的な症状がでていた?

Aさん:肩こりがひどくなって、夜眠れない。最初はお酒を飲んでなんとか寝ていたんですけど、そのうち量が増えていって。それでも眠れない。それから、とにかく頭が回転しないんです。
スーパーに買い物に行っても、何を買えばいいのか分からない。あと、印象的に覚えていることなんですけど、晴れていても空が青く感じないんです。その時は東京に住んでいましたが、東京の空はいつも曇っているのかな?なんて思ったり(笑)。

センター:うつ病って言われてどう思いました?

Aさん:私は、クリニックの先生に「脳の病気だし、治療によって治る」って言われたこと、また病名がつくことで気持ちは少し落ち着きました。精神病に偏見を持っている人が、うつ病って言われたら落ち込むかもしれないですけどね。
実際私の周囲の親戚などは、私が精神病ということに大変ショックを受けていたみたいです。
そして抗うつ剤を飲むとすぐに元気になって、その週の週末には職場に「来週から出勤します」なんて連絡してました。さすがにその時は職場から「残りのスタッフが助け合ってやっているから、もうしばらく休め」って言われて、結局1ヶ月休みました。

センター:1ヶ月休んだ後は?

Aさん:復職しましたけど、うつ病という病名がついたことで、元の職場ではなく家から近い診療所に異動になりました。でも、とにかく職場復帰できて嬉しかったし、周りも気を使ってくれて、うつ病になってよかったなんて思っていましたが、まだ管理職のままだったからそれなりに忙しかったし、子供は不登校になったりで、少しずつ無理していたんでしょうね。
休みも1ヶ月では足りなかったんでしょう。半年後にまた空が曇ってきて・・・。

センター:その半年間、治療や服薬はどうしていたんですか?

Aさん:最初、ある程度服薬で調子よくなった後は、睡眠薬くらいは飲んでいましたが、抗うつ剤は止めていました。少し調子悪くなっても「明日はよくなる」って自分に言い聞かせながら。
4月に復職して9月の終わりくらいですかね、動けなくなるくらい悪化してしまって・・・。その時は家事も育児もできなくなりました。仕事もできないし、発病したときもなんとかできていた家事・育児もできなくなって、全てにおいて自信がなくなって・・・。
それまで挫折なんてしたことないから、すごく落ち込みました。子供達と心中を考えたのもその頃ですね。自殺は何とか持ちこたえて、それから半年くらい抗うつ剤を飲みながら仕事を休みました。

センター:休んでまた職場復帰?

Aさん:はい。薬を飲めば、状態は2~3ヶ月で楽になるんですね。2月頃にはお手伝い程度に職場に出ていたんですけど、心中のことなどを話したりすると「もう実家に帰ったほうがいいんじゃない?」なんて言われたりしましたね。
でも、実家には帰りたくなかったから、最後のチャンスってことで、4月から夜勤のない外来の職場に復職させてもらいました。

センター:発病からちょうど1年。

Aさん:ですね。知らない職場だから、周りの人は「元気な人がきた」って感じ(笑)。また働けると思うと嬉しくて、管理職でもなくなったから、久しぶりの現場が楽しくて。プライベートでも予定をどんどん入れて、それを消していくことが楽しい、忙しいことが嬉しい、そんな気分でした。
あいかわらず職場でも頼られて、それに一生懸命に応えようと・・・。

センター:そうなるとまた調子悪くなりますよね・・・。

Aさん:また9月に頃に悪化して、10月から休職。やっぱり繰り返してしまう、もう仕事はできないって、落ち込みもどんどんエスカレートして。
家から出ることといえば通院することだけ。あとは部屋に引きこもる毎日。
そうなると悪い方向にしか考えないんですね。仕事や家事、子育てもできないから、子供の将来や生活費のこと、生命保険の保険金はいくらかとか、子供達は私より施設で育ったほうが幸せなんじゃないか、とか。もう死ぬしかないって。
もらった薬を大量服薬して自殺を試みました。
今考えるとバカなこと考えてたなって思いますけど。その時は死ぬことしか考えられなくなっているんですよね。まあ、結局薬では死ねなくて・・・。子供のこともあって、その年の年末に実家に帰りました。

センター:やっと治療に専念ですね。

Aさん:とりあえず家事からは解放されますよね。食事は母が作ってくれたもの食べていればいいし。
まず病院を探さないといけない。電話帳で調べたり評判を聞きながら、何件か電話してみました。そうすると、すぐに診てくれないんですね。まず何日も先の予約をしてくださいって感じで。すぐに診てくれた所が今の主治医のクリニックでした。
東京でも主治医がいたし、いい先生だなって思ってましたけど、働いては悪化してを繰り返していたから、なんとなく精神科の先生に対して不信じゃないけど、疑心暗鬼な感じがありました。
今の先生は「とにかく休め!休め!」で、休養と服薬で半年後くらいには楽にはなったけど、まだ休みなさいと。結局1年くらい休みました。今は、職場の人に理解してもらいながら、少しずつ働いています。

センター:やっぱり、ゆっくりゆっくり休まないといけないんですね。うつ病の治療としては、薬物療法やカウンセリングなどが中心になると思いますが、それ以外にも大切なものってありますか?

Aさん:とにかく十分な休養ですね。よく眠ること。あと周囲の環境。家族や友人などに病気のことを理解してもらうこと。どんな症状なのか、落ち込んでるときはどんなことを考えているのか。
実は母親とはうまくいってないんですよね。病気に対して理解がない。調子が悪いときは何もする気が起きないんですね。そういう時に「病は気からっていうでしょ!」なんて言われたら余計に落ち込みますよね。怠けてるわけじゃないのに・・・。
私は家では安らげていません(笑)。支えてもらったり、安らぎを感じたり、ゆっくり話を聞いてくれる相手が身近にいて、そういう楽な環境の中で治療していくことが理想ですよね。
それから主治医の先生との相性っていうか、信頼して治療を受けることが大切。私は今の先生を信頼して、治療を続けてますし、いい方向に向かっていると思います。
でも全ての患者がその先生を信頼できるかって言えばそうではないと思うんですね。人間ですから相性もあるでしょうし。それから、精神科の薬はすぐに効果が表れないことが多いので、薬飲んでもすぐよくならないからって、落ち込んだり、すぐに治療を止めたりはしないでほしいです。焦ってはダメ。回復を待つことも大切な薬だと思います。

センター:精神科って普段受診することがなくて、どう病院を選べばいいか分からなかったりしますよね。これも、未受診のうつ病患者や自殺者の増加に繋がっているような気がします。Aさんなりの病院選びのポイントがありましたら教えてください。

Aさん:まず最初に、精神病院や精神科クリニックに対するイメージを変えてほしいですね。精神病院って言うと、鉄格子の中に閉じ込められたりとか・・・。歴史的なものもあって精神病に対する偏見って今でも強いですよね。
精神病は誰でもかかりうる病気。もっと気軽に受診してください。同じ悩みをもっている人がたくさんいますから。
それと病院選びですが、まず通いやすいところ。家や職場から近いところでも、どうしても人の目が気になるのであれば少し離れた地域の病院でもいいと思います。
どこがいいっていうことは人それぞれですし、はっきり言って受診してみないと先生の人柄もわかりません。気軽に受診してみて、合わないなって思ったら他の病院を探してみてもいいと思います。

センター:話は変わりますが、幼少の頃から振り返って、うつ病にかかりやすい性格みたいなもの持っていたと思いますか?

Aさん:それまで自分は、胃腸と脳(こころ)の病気には絶対ならないって思ってました。胃潰瘍になったこともあるんですけどね(笑)。落ち込んでも、すぐ切り替えができていましたし。挫折もなく、いわゆる明るく元気な人で。
先程も話しましたが、自分のこと強くて、やれば何でもできる人間だって思っていたから、なんでも抱え込んでしまうところが悪いところだったのかな・・・。頑張りすぎちゃう。サラリーマンであれば、組織の中で働いているんだから、本当は自分ひとりくらいいなくても会社は回るものなんですよね。でも、その時は「私がいなくなったら大変!」なんて思ってて。
私のような人でもうつ病になるんだから、どんな人だってうつ病になりうるって思うし、潜在的にたくさんの人がうつ病って分からずに悩んでいるんだろうなって思います。実際、周りの人と話してみると、軽くても同じような症状を経験している人がたくさんいますし。

センター:うつ病になる前と後では、考え方や生き方など、変わったことがありますか?

Aさん:変わりましたね、楽に生きようって。美味しいもの食べて、好きなことをして、できることなら、いやなことはやらない。面倒な話になってきたら、すっと身を引くっていうことを覚えましたね。
あと、人からのアドバイスを聞くようになりました。「こうした方がいいんじゃない?」なんて言われると、そのとおりにすることにしてます。何かあってもその人のせいにできますしね(笑)。

センター:今、ひどく落ち込んでいる人や、自分がうつ病じゃないかと思っている人に伝えたいことやアドバイスはありませんか?

Aさん:こっそりでもいいから、早く専門の病院に行ってほしいです。自分ひとりじゃないっていう気持ちで、誰でもいいから悩みを聞いてくれる人に、ゆっくり話してみてください。私も落ち込んでいる時は、死にたい、死んだ方が楽なんて考えてましたけど、それはうつ病という病気のせいで、頭が働かなくなっていたんです。
それと、うつ病って、弱い人っていう訳じゃなくて、優しい人や真面目な人がかかる病気だって思うんですね。
自分を責めたりしないでほしい。とにかく1人で抱え込まないで、家族や友人に相談してみる、そして早く病院にかかってください。きっと楽になると思います。生きていればきっと楽しいこともあります。

センター:最後に当事者として行政や関係機関などにメッセージがあればどうぞ。

Aさん:社会全体が精神病に対する偏見をなくして、苦しんでいる人が気軽に精神科に受診できるようになってほしいですね。ぜひ啓発活動など進めてほしいです。
それと現在、法改正について話し合われているようですが、医療費の公費負担など、当事者が病院にかかりやすい制度にしてほしいです。病院に行けなくて、病気が悪くなる人が出ないように。
最近、自殺者も増えてきているし、10人に1人がうつ病にかかるなんて言われてるでしょ?こんな社会ですから、うつ病だけじゃなく、こころの病気ってありふれたものなんですよね。
いつ、誰が精神病になってもおかしくないっていう気持ちで、病気のことを理解して、精神病を患っても普通に生きていける世の中になってほしいですね。

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