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こころのメッセージ


僕のひきこもり

当事者の立場から Iさん

H28年3月掲載

私は現在31歳です。私がひきこもり始めたのは大学生のころのことです。実際にひきこもるようになったのは大学院に進学してからのことです。それからは、心療内科やカウンセラーの方のお世話になりながら、良くなったり悪くなったりを繰り返していました。

大学では初めての土地で一人暮らしをして、新しい友人との人間関係を築いていく必要がありました。しかし、そのころの私は人との関わりを重視しておらず、それよりも一人で本を読んだり音楽を聴いたりすることに熱中していました。多少は友人も出来ましたが、基本的には一人でいたいと思って過ごしていました。

大学3年生になると勉強や実験などが忙しくなり、それと並行して就職活動も少しずつ意識するようになりました。そのころから、だんだんと肉体的にも精神的にもストレスがかかってきて、体調を崩すことが増えてきました。一人暮らしなので、食生活が乱れがちで栄養も偏っていたのだと思います。また、研究室の実験は日をまたぐこともしばしばで、睡眠も不規則になりがちでした。

大学院に進学してからも研究室、講義、就活で身も心も休まらない生活が続きました。そのうち、大学に行けない日が増えていき、初めは2,3日休んだりしていたのが、1週間になり、気づけば1か月、2か月と研究室に行けない状態に陥ってしまっていました。その頃は自分でもよくわからない不安や焦りに襲われて、ただただ寝て過ごしていました。不安や焦りを感じながらも家から出ることすらままならない状況で、そのことがさらなる不安や焦りを生むという悪循環を繰り返していました。勇気を出して研究室に行くのですが、すぐに耐えきれなくなり家に帰ってまたひきこもってしまいました。

その後、休学をして実家に戻り、近くの心療内科に通いながら1年半かけて回復しました。大学に戻り卒業することはできましたが、再び心身ともに参ってしまい卒業後はまた実家で心療内科に通ったりしながら徐々に回復していきました。

ひきこもりから抜け出すきっかけとなったのは、「すてっぷ」に通うようになったことです。すてっぷは北九州市が作ったひきこもりの人たちを支援している機関で、NPO法人が運営しています。本格的にすてっぷを利用し始めたのは約1年半前からです。初めは挨拶さえまともにすることができませんでしたが、少しずつすてっぷの空間に慣れていきました。すてっぷの存在は、母の持ってきてくれたチラシで知りました。その資料を見てここなら行けそうかなと思い、一度行ってみることにしました。久しぶりに人と話をしてすごく楽しかったのですが、その反面とても疲れてしまいました。またすぐに行きたい気持ちはあったのですが、次にすてっぷに行くことができたのは初めて行ってから半年程経ってからのことでした。

その後は、週に1度のペースですてっぷに行き、人と話をすることに少しずつ慣れていきました。通っているうちに、仲のいい友人も出来て、彼らと遊びに出掛けたりするようにもなりました。通い始めたころは、話をした中で気になったことを次に来る時までに調べておき、次回そのことを話すということを繰り返していました。そして、徐々に人と話をすることで疲れるということがなくなってきました。

ひきこもりを抜け出してからもすてっぷを利用させてもらっています。バイトを始めてすぐのころは体力的にも精神的にもきつくて、続けられるだろうかと心配でした。しかし、同じような悩みを持つ友人や、スタッフの方々に相談に乗ってもらい、何とか今まで続けることができています。現在はバイトをしながら、就職活動にも取り組んでいます。ですので、以前のように頻繁にすてっぷへ行くことはなくなりましたが、時間のあるときには楽しく話をしたり、相談に乗ってもらったりしています。

最近では、いろんな人たちと関わることが楽しいと思えるようになりました。すてっぷやバイト先の友人と遊んだり、たわいのない話をしたりすることがとても大切な時間になりました。たくさんの人たちと出会い、いろんな経験をして、日々成長していると感じています。

ひきこもりを経験して思ったことは、人は一人では生きていけないということです。家族や友人、周りの多くの人たちに支えられて私は生きているのだと感じました。私がいま生きているのは、本当にたくさんの人たちのおかげなのだと感謝しています。そのことに気付けたことは、これからの人生においてとても大きな意味を持つと思います。そして、これからは私も周りの人たちの支えになりたいと心から思えるようになりました。

今は両親と一緒にいる時間をとても大切なものに感じています。これまで私は両親をたくさん傷つけてきました。自分のことで精いっぱいで、両親が私のことを大切に思ってくれていることに気づくだけの余裕がありませんでした。なので、これからは両親ともっと楽しく話をしようと思っています。

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