メイン画像へジャンプ
ここから本文です

こころのメッセージ


支援の現場からみえてきたこと -高齢者のアルコール問題-

公益社団法人 福岡県介護支援専門員協会 常任理事 白木 裕子

H29年9月掲載

皆様はケアマネジャーという仕事をご存じでしょうか。
ケアマネジャーは、介護や支援が必要となった人が介護保険等を利用して適切なサービスが受けられるよう、相談への対応や計画の作成、連絡・調整などを行う専門職です。
私は、介護保険が導入された2000年にケアマネジャーになって以来、これまで17年にわたりたいへん多くの高齢者のお宅を訪問して、その方の生活の場でさまざまな支援に携わってまいりました。

その中で、支援者としてたいへん心残りなことがあります。それは、アルコール依存が原因で中年期に離婚され、糖尿病の合併症により右足を切断されていたある男性高齢者の方でした。

その方は、決まって日曜日の6時半ごろに、気分が悪いので救急車を呼んで欲しいとケアマネジャーの事業所に電話がありました。電話口では呂律が回らずに明らかに飲酒をしている状況がうかがえました。
電話の向こうからテレビのサザエさんのテーマソングが聞こえ、電話のやり取りはいつも「おなかが痛い」「頭が痛い」「このまま死ぬかもしれない」などとお酒で呂律が回らない口調でした。

その方は、自分の訴えを聴いてもらうことで落ち着いてくるので、実際に救急車を呼ぶことはなかったのですが、その方が日曜日の家族団らんの時間になると寂しくてやりきれない気持ちになることを再三の訴えから理解することができました。

ケアマネジャーとして、その方の寂しさと辛さについては一時的に受け止めることはできましたが、アルコール依存の治療の必要性についてはなかなか理解を得ることが出来ませんでした。

ある夏の日、飲酒と室内の暑さから脱水症を発症して救急車で緊急入院となり、それを機にアルコールに関する治療が行なわれましたが、その半年後にはまた同じ状態となって、最後には事故なのか原因がわからないまま人生の幕引きとなりました。

現在、高齢者とアルコール依存の問題は、私たちケアマネジャーにとってたいへん身近な問題となっています。
独居の高齢者が増えた昨今では、生きる楽しみや生きがい、居場所がないなど心のどこかにすっぽりと大きな穴が開いてしまい寂しさをお酒で紛らわす行動がいつしかアルコール依存となってしまう現状を多く見てきました。
特に、独り暮らしの高齢男性では、このような傾向が現れやすい状況があります。

アルコール依存は病気であり、一度依存状態になると、アルコールからの離脱はたいへん困難です。
このため、高齢期にアルコール依存にならない生活を送ることがとても大切です。

そのためには、住み慣れた地域で顔なじみの近隣者と趣味などの活動を通して豊かな交流を育むこともアルコール依存にならないための一つの方法であると思います。
また、一人暮らしになって、介護や支援が必要な状況となっても、アルコールに依存せず、生き生きとリズムのある生活が送れるよう、私たちケアマネジャーが直接お宅に伺って、その方の生活の場で必要な支援を行なってまいりますので、どうぞお気軽にご相談ください。
ケアマネジャーはとても身近な相談相手です。

  • 一覧へ戻る